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ABM(アカウントベースドマーケティング)の成否は、「リストの精度」と「運用の共通言語化」で9割が決まると言っても過言ではありません。どれだけ優れた施策を打っても、アプローチする企業リストそのものがズレていれば、営業・マーケティングの工数は成果に結びつきません。
本記事では、単なる企業の抽出方法だけでなく、営業との合意形成、優先度(Tier)の設計、優先度別のアプローチ方法、そして作ったリストを腐らせないための管理・ツール選定までを、実務に即して完全網羅します。「リストを作ったのに営業が動かない」「一度作って放置されている」といった課題を抱える方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事はこんな方におすすめです |
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ABMリストとは、自社にとって価値の高い特定企業(アカウント)を狙い撃ちするために作成する、戦略的なターゲット企業リストのことです。一見すると通常の営業リストやアプローチリストと同じように見えますが、その設計思想はまったく異なります。
これまでのリスト作成の延長線でABMに取り組むと、ほぼ確実に失敗します。なぜなら、ABMは多くの企業に広くアプローチするのではなく、勝てる企業を見極めて深く攻める発想だからです。まずは、従来型のリストとの3つの本質的な違いを押さえ、読者の前提知識を揃えていきましょう。
従来のリードジェネレーションでは、「とにかく件数を集める」ことが評価されがちでした。しかしABMリストでは、件数の多さは評価指標になりません。重視されるのは、1社あたりの将来的な取引額(LTV)や、自社ソリューションとの親和性といった「アカウントの価値」です。
100社の薄いリストよりも、確実に受注につながる30社の濃いリストのほうが、ABMでははるかに価値があります。「リストが少ない=悪」ではなく、「狙うべき企業に絞り込めている=良い」という評価軸への転換が、最初の一歩です。
通常の集客リストは、マーケティング部門が単独で作成し、営業へ渡して終わりというケースが多く見られます。一方ABMリストは、営業とマーケティングが「この企業群を狙う」という点で事前に合意していることが前提条件です。ターゲットが両部門の共通言語になっていなければ、マーケが温めたアカウントを営業が後回しにする、といったすれ違いが起こります。
業種・規模・エリアといった企業属性だけでリストを組むのは、ABMでは不十分です。同じ条件を満たす企業でも、「今まさに課題を感じて情報収集している企業」と「当面ニーズがない企業」では、アプローチの優先度がまったく異なります。
そのためABMリストでは、自社サイトへのアクセスや資料ダウンロードといったインテントデータを掛け合わせ、「検討フェーズ=タイミング」を考慮することが重要になります。
ABMリストの作り方を解説する前に、どうしても先にお伝えしておきたいことがあります。それは、リスト作成はマーケティング部門だけで完結させてはいけない、という点です。
技術的に企業を抽出することは誰にでもできます。しかし、そのリストが現場で実際に使われ、成果を生むかどうかは、初期段階での営業との目線合わせにかかっています。ここを飛ばすと、せっかく作ったリストが誰も使わない資料になりがちです。
マーケティングがデータ上の条件だけでリストを作ると、営業現場の肌感覚やリソースの実態と乖離することがよくあります。「この業界は過去にことごとく失注している」「この規模感は今の体制では対応しきれない」といった現場の暗黙知は、データには現れません。
結果として、営業から見て「机上の空論」に見えるリストが出来上がり、優先的に追われることなく放置されてしまうのです。
営業に「自分ごと」としてリストを使ってもらうには、作成プロセスそのものに営業を巻き込むことが効果的です。合意形成のためのSTEPを見ていきましょう。
勝てた企業・負けた企業の共通項を、営業とマーケが同じデータを見ながら洗い出します。これがターゲット基準の土台になります。
日々顧客と接している現場の感覚を、選定条件として明文化します。データだけでは拾えない精度がここで加わります。
リストは作って終わりではありません。定例の場で「このアカウントは動きがあった」「ここは外そう」と継続的に見直す運用を、最初から設計しておきます。
ここからは、いよいよ具体的なABMリストの作り方を5つのステップで解説します。前章でお伝えした「営業との合意」を土台にしながら、ICPの定義から候補企業の抽出、優先度分類、キーマンの特定までを順番に進めていきましょう。
ICP(Ideal Customer Profile=理想の顧客像)とは、自社にとって最も成功しやすく、長く取引が続く顧客の条件をまとめたものです。業種、従業員規模、売上規模、利用ツール、抱えている課題などを言語化します。前章で分析した受注・失注データが、ここで役立ちます。
定義したICPを営業現場に共有し、認識をすり合わせます。「この条件で本当に勝てるのか」を現場目線で検証し、必要なら基準を修正します。この合意があるかないかで、後工程のリストの実用度が大きく変わります。
合意したICPの条件をもとに、企業データベースやセールスインテリジェンスツールを使って、条件に合致する候補企業を抽出します。また、ツールを活用した新規企業の抽出だけでなく、自社で過去に出展・開催した展示会やセミナー等で獲得した名刺・リード情報の活用も非常に重要です。これら既存の接点(ハウスリード)の中からICPに合致する企業を洗い出し、候補リストに統合する作業もこの段階で行います。手作業のリサーチでは限界があるため、この段階で適切なデータソースを用意できるかが、リストの網羅性を左右します。
抽出した数百〜数千社をすべて同じ熱量で追うことは、リソース的に不可能です。そこで、優先度に応じてTier(階層)に分類し、メリハリをつけます。具体的な設計方法は次章で詳しく解説します。
企業リストが固まったら、最後に各社の「誰にアプローチするか」を特定します。決裁権を持つ役員層と、課題を起案する現場担当者の双方を押さえることが理想です。部署名・役職・可能であれば氏名まで特定できると、その後のアプローチ精度が一段と高まります。
Step4で触れたTier分類について、ここでさらに踏み込んで解説します。抽出した数百〜数千社を、どのような基準で、どのくらいの規模に分類し、どこにリソースを集中させるか。この設計の巧拙が、ABM全体の費用対効果を決定づけます。
Tierは一般的に3段階で設計します。LTV(顧客生涯価値)と自社ソリューションとの親和性を軸に、以下のように振り分けるのが基本形です。
件数はあくまで目安です。重要なのは、Tier 1にはリソースを惜しまず投下し、Tier 3は効率重視で自動化するという、明確なメリハリをつけることです。
企業属性だけでTierを固定してしまうと、優先度が静的になりがちです。そこで掛け合わせたいのが、インテントデータです。自社サイトへのアクセス有無、特定のホワイトペーパーのダウンロード履歴、料金ページの閲覧などの行動が見られる企業は、検討フェーズが進んでいるサインです。
たとえ属性上はTier 2でも、強いインテントが観測されれば一時的にTier 1相当として扱う、といった動的な優先度調整を行うことで、「今アプローチすべき企業」を逃さなくなります。
リストを作って終わりにしないために、ここではTierごとに具体的なアクションプランを提示します。優先度に応じてマーケティングと営業がどう動くべきかを明確にしておくことで、リストが「実際に成果を生む武器」へと変わります。
最重要顧客であるTier 1には、コストをかけてでも個別最適化したアプローチを行います。たとえば、レター営業、役員・キーマン向けの限定イベントへの招待、その企業専用に作り込んだ特設ページの構築などです。「あなたの会社のために用意しました」と伝わる体験を設計することが鍵になります。
Tier 2には、1社ごとではなく「業界・課題別」にグルーピングして、セミカスタマイズしたアプローチを行います。同業他社の導入事例を提示しながらインサイドセールスが架電したり、業界特化型のウェビナーへ誘導したりするのが効果的です。完全な個別対応ではなくとも、「自社に関係のある内容だ」と感じてもらえる粒度を狙います。
Tier 3は、現時点でニーズが顕在化していない層のため、効率重視で育成します。ハウスリスト化したうえで、MA(マーケティングオートメーション)を活用し、定期的なメルマガ配信やアカウント指定のWeb広告で認知を維持・拡大します。ナーチャリングの過程で前述のインテントが観測されたら、上位Tierへ引き上げる運用にすると、機会損失を防げます。
関連記事:ABMはなぜ「リスト作り」で止まるのか?営業を動かせないABMから脱却する“組織連携”の教科書
ABMリストは「作って終わり」ではなく、営業・マーケティングがリアルタイムで進捗を追いながら育てていくものです。そのためには、自社のフェーズに合った管理ツールを選び、さらにリストの鮮度を保つための運用ルールを定めておく必要があります。
この章では、フェーズごとの最適なツール構成を解説したうえで、どのツールを使う場合でも欠かせない「データクレンジング」と「定期的なリスト更新」について詳しくお伝えします。
ABMを始めたばかりの初期フェーズでは、スプレッドシートやExcelでも十分に運用できます。手軽に始められ、項目も自由に設計できる点がメリットです。一方で、データの重複や表記揺れが発生しやすく、行動データのリアルタイムな同期が難しいというデメリットがあります。対象企業が増えてくると、管理が破綻しやすい点に注意が必要です。
本格的に運用フェーズへ移行したら、SalesforceやHubSpotといったCRM / SFAの導入を検討しましょう。最大のメリットは、アカウント単位で活動履歴や商談状況を紐付けて管理できる点です。営業の動きとマーケの施策が一元化され、Tierの状況や接触履歴を関係者全員が同じ画面で把握できるようになります。
さらに拡張フェーズでは、セールスインテリジェンスや企業データベースを組み合わせます。未接点のターゲット企業データを自動で補完し、後述する名寄せ・クレンジングを自動化できる点が大きな強みです。コストは高めになりますが、リストの鮮度と網羅性を人手をかけずに維持できるため、ABMを継続的に回す体制づくりには有効です。
関連記事:【ABMツール選定ガイド】導入で失敗しないための評価軸とタイプ別比較
どのツールを使う場合でも、ABMリストの質を高めるうえで欠かせないのが、定期的なデータクレンジングです。
重複データの削除、古い情報の更新、不正確なデータの修正などを行うことで、リストの精度を維持し、効果的なアプローチが可能になります。表記揺れのある同一企業が別レコードとして二重に登録されていたり、すでに統廃合された企業情報が残っていたりすると、アプローチの重複や的外れな施策につながり、現場の信頼を損ねてしまいます。
データクレンジングは一度やれば終わりという単発の作業ではなく、継続的に行うべき重要なタスクとして位置付けることが大切です。フェーズ3で触れた企業データベースを活用すれば、名寄せやクレンジングを自動化できるため、リスト規模が大きくなるほどその効果は大きくなります。
ABMリストは作成して終わりではなく、常に更新と精緻化を行う必要があります。市場動向や企業の状況変化を反映させて定期的にリストを見直すことで、常に最適なターゲット企業へアプローチできるようになります。
たとえば、四半期ごとにリストを見直し、新たな有望企業の追加や、優先順位(Tier)の再評価を行うことが効果的です。組織変更・資金調達・新規拠点の開設といった企業側の変化は、検討フェーズが動くサインでもあるため、こうした動きを捉えてTierを入れ替えていきます。
また、マーケティング活動の結果や営業部門からのフィードバックを基に、リストの精度を高めていくことも重要です。週次・月次の定例ミーティングを、この更新・精緻化の場として機能させましょう。リストを“生きた状態”に保ち続けることこそが、ABMで成果を出し続ける最大のポイントです。
関連記事:なぜ大手は落ちないのか?を解決する「3層ABM」実践ガイド
ここからは、これからABMに取り組む方や、現在運用で課題を感じている方が抱きやすい疑問を整理し、実践的な回答をまとめました。基本的な考え方から、具体的な実行フェーズにおける悩みまで、ABMの効果を最大化するためのヒントとしてお役立てください。
A. 企業規模やリソースによりますが、まずはTier 1として確実に向き合える20〜30社から始めるのがおすすめです。最初から数千社を抱えると運用が回らず、形骸化しやすくなります。小さく始めて成果を確認しながら広げるのが定石です。
A. ハウスリストは過去に接点を持った見込み客の集合体です。一方ABMリストは、接点の有無に関わらず「自社が狙うべき」と戦略的に定めた企業群を指します。ハウスリストの中からICPに合致する企業をABMリストへ引き上げる、という使い方もできます。
A. 多くの場合、原因はリスト作成プロセスに営業が関与していないことにあります。第2章で解説したとおり、受注・失注データの共同分析や定例での見直しを通じて、営業を「作る側」に巻き込むことが解決の近道です。
関連記事:なぜ役員は動かないのか?ABMの勝率を変える「刺さるコンテンツ」設計のすべて

ここまで解説してきたABMリストの作成・運用には、質の高い企業データと、変化を捉える仕組みが欠かせません。SalesRadarは、企業の変化をキャッチする企業データベースとして、ターゲット企業の抽出から、組織変更・投資・採用情報といったインテント情報の把握、名寄せ・クレンジングの自動化までをサポートします。
スプレッドシート運用の限界を感じ始めたフェーズや、「今アプローチすべき企業」をデータドリブンに見極めたいフェーズで、ABMリストの精度を一段引き上げる手段としてご活用いただけます。

本記事では、ABMリストの作り方を、考え方の前提から5つの作成ステップ、Tier設計、優先度別アプローチ、そして管理・更新までを通して解説しました。ABMリストは、一度作れば完成する静的な資料ではありません。市場や企業の変化、現場のフィードバックを取り込みながら、営業とマーケティングが二人三脚で育てていく「生き物」です。本記事を参考に、成果が出続けるABMリスト運用の第一歩を踏み出しましょう。
この記事の著者
編集部
SalesRadar編集部
SalesRadar編集部は、株式会社FUTUREWOODSが運営する企業データベースサービス「SalesRadar」の公式メディアチームです。3,500社以上のマーケティング支援実績をもとに、ABM・リード獲得・営業効率化に関する最新情報と実践ノウハウを発信しています。
この記事の監修者
SalesRadarユニットマネージャー/法人DBプロ
猪俣詢 (いのまたまこと)
エンジニアとして10年以上、法人データベースの設計・開発・運用に従事。現在はBtoB営業インテリジェンス・プラットフォーム「SalesRadar」のPdMを務める。 データを「作る側」の視点から、名寄せ・法人DB活用・ABM設計を営業・マーケティング現場の言葉に翻訳することを専門とする。中堅BtoB企業のSales Ops・営業企画向けに、法人DBを営業の武器にするための実践知識を発信している。