
ABMを始めたのに、営業が動いてくれない。
ターゲットリストを渡しても、結局放置されている。
多くのBtoB企業がABM(アカウント・ベースド・マーケティング)に挑みながらも、その実態はマーケティング部門が作成したきれいなリストの提供で終わってしまっています。本来、ABMは個人ではなく企業を起点とし、全社一丸となって戦略的にアプローチする手法です。しかし、営業現場の本音や知見が無視されたままでは、どんなに精緻なデータも机上の空論に過ぎません。
本記事では、ABMのメリット・デメリットから、手法、そして事例を交えた成功と失敗を分ける決定的な違いについて詳しく解説します。
この記事はこんな方におすすめです |
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BtoBマーケティングにおいて「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」は、もはや一過性のブームではなく、持続的な成長に不可欠な戦略となりました。しかし、ほとんどの企業がSFAを導入し、ターゲットリストを作ったという段階で足踏みしています。
ABMの本質は、高度なツールを使いこなすことでも、きれいなExcelリストを作ることでもありません。「誰に、何を、どう届けるか」という営業の基本を、組織を挙げて極限まで研ぎ澄ますプロセスそのものです。営業が知っておきたいABMの基礎から、陥りがちな落とし穴、そして営業現場を熱狂させる組織連携について見ていきましょう。
ABMとは、不特定多数の「個人(リード)」を集めるのではなく、自社にとって価値の高い「企業(アカウント)」をあらかじめ特定し、組織全体で戦略的にアプローチするBtoBマーケティング手法です。これまでのBtoBマーケティングは、リード(個人)をいかに多く獲得するかが主戦場でした。展示会やウェビナーで名刺を集め、スコアリングで検討度を測り、温度の高いリードを営業へ引き渡す――。いわば“数を積み上げる”モデルです。しかし、この方法には明確な限界があります。高額商材や大規模システムの導入において、最終的に意思決定を下すのは個人ではなく「企業(組織)」だからです。
例えば、ある担当者が強く賛同してくれたとしても、それだけで契約が決まるわけではありません。
このように、キーマン一人を口説くだけでは足りないのです。ここで登場するのが、ABMという考え方です。
ABMは、アプローチの順番を逆転させます。下記のように、最初に「どの企業を攻略するか」を決め、その企業内の関係者全体を設計していきます。
従来型(リードベース) | ABM(アカウントベース) |
網を広く投げ、引っかかった“魚(個人)”を処理する | 狙うべき“釣り堀(企業)”を決め、その中のキーマン全員に戦略的にアプローチする |
また、ABMは、リード数の最大化を目指す施策ではありません。
重要なのは、自社にとって本当に価値のある企業かどうかという視点です。
売上インパクトが大きく、長期的なパートナーになり得る企業を見極め、そこに集中投資する。それが、数を追うマーケティングから「質を追うマーケティング」への転換です。
この思想の転換こそが、ABMの出発点なのです。
では、なぜ今、特に大手企業ほどABMに本気で取り組むべきなのでしょうか。それは市場の成熟による差別化の困難さと、購買プロセスの複雑化に対応するためです。一律のメッセージではなく、企業ごとの課題に深く刺さるアプローチが求められています。
現代BtoB市場における2つの現実について詳しくみていきましょう。
現在、多くの業界で製品・サービスはコモディティ化しています。性能や機能だけでは差別化が難しくなり、顧客は営業担当者と会う前に、すでに比較検討を終えています。
その結果、不特定多数への一律メッセージは「ノイズ」として処理されがちです。
大量配信型のマーケティングは、“届いているようで、届いていない”という状態に陥りやすいのです。ABMは、企業ごとにメッセージを最適化し、その会社にとって意味のある情報だけを届けるというアプローチをとります。だからこそ、情報過多の時代において強いのです。
BtoBの意思決定は年々複雑になっています。たとえば、Gartner社の調査(※1)によると、BtoB購買に関与する意思決定者は平均6〜10人にのぼるとされています。
これは何を意味するのでしょうか。一人のリードを育成しても、裏側にいる関係者全員の合意を取らなければ契約には至らない、ということです。
このように、それぞれが異なる関心軸を持っています。この環境下で成果を出すには、企業単位で情報を統合し、役割ごとに最適なコンテンツを設計する必要があります。
まさにこれこそが、ABMの本質です。
ABMは戦略的で再現性の高いアプローチとして注目されています。
しかし、デメリットもあることを忘れてはいけません。メリットは「ROI向上」「営業とマーケの連携強化」「LTV最大化」です。一方で、成果が出るまでの期間の長さや、煩雑なデータ統合作業といったデメリットも存在します。
ABMは「狙う企業」を明確に定めるため、マーケティングコストの無駄撃ちが減ります。
大量リードの獲得ができ、低確度商談への対応や、優先度の低い案件への時間投下を減らし、高単価・高確度の企業にリソースを集中できます。
結果として、少ない件数でも大きな売上インパクトを生む構造がつくれます。
従来は、マーケはリード数を追い、営業は受注件数を追うという“評価指標のズレ”が分断を生んできました。
しかしABMでは、この企業を攻略するという共通ゴールを持ちます。
すると、誰にアプローチするか、どんな情報を届けるか、どのタイミングで営業が入るかといった議論が具体的になります。ABMは単なるマーケ施策ではなく、営業とマーケを戦略レベルで接続する装置でもあるのです。
ABMは新規開拓だけでなく、実は既存顧客にも有効です。企業単位で関係性を設計するため、アップセルやクロスセル、部門横展開といった深耕が戦略的に行えるようになります。
1案件の受注で終わらせず、企業との長期的な関係を設計できる点が大きな強みです。
一方で、ABMには見落とされがちな課題もあります。
ABMは短距離走ではなく、中長距離戦です。ターゲット企業の攻略には、関係構築や合意形成、稟議プロセスが必要になります。当然、1件あたりの商談サイクルは長くなります。
そのため、毎月のリード件数や短期KPIといった従来指標とは相性が良くありません。
このように、評価制度が変わらないままABMを導入すると、現場に混乱が生まれます。
ABMを実行するには、「企業単位での情報統合」が不可欠です。
しかし現実には、SFA/MA/名刺管理ツール、Excelの独自管理表など、データは分断されています。これらを企業単位で名寄せし、関係者情報を整理し、履歴を統合する作業は想像以上に地道で時間がかかります。戦略はスマートでも、運用は極めて泥臭い。ここを甘く見ると、「理想は分かるが回らない」という状態に陥ります。
関連記事:【2026年最新】営業のための「顧客データの名寄せ」完全ガイド。CRM管理からABMツール連携まで徹底解説
ABMは戦略的な取り組みですが、現場では思うように進まないケースが少なくありません。その最大の理由は、営業現場の不在です。マーケティング部門がデータだけで選んだターゲットは、現場の状況を反映していないため、営業の納得感を得られず放置されるからです。
ABMで失敗するケースとしてよくあるのが、マーケティング部門がデータ分析をもとに売上規模や業種、成長率、Web閲覧履歴などから「理論上、有望そうな企業」を抽出し、そのまま営業へ渡すケースです。
しかし営業からすると、「確かに大手だが、すでに強い競合が入り込んでいる」「この企業は過去に失注していて、しばらく動きはない」「連絡先が古く、実際はキーマンが異動している」と感じることがあります。
つまり、データ上の“正解”と、現場の“真実”は必ずしも一致しないのです。
では、どうすれば営業を巻き込み、組織として機能するABMを構築できるのでしょうか。
データによるフィルタリングは、あくまでたたき台です。そのリストを営業に提示し、次のような問いを投げかけます。
この対話を通じて、データ × 現場感覚を掛け合わせた、精度の高いTALが完成します。
営業の「なんとなく良さそう」は貴重な知見ですが、属人的でもあります。そこで重要になるのが、営業とマーケが合意した“アカウントスコアリング”の設計です。
例えば、導入事例ページを複数回閲覧している、セミナー参加後の資料DL、同一企業から複数名がアクセスしているといった具体的な行動を「商談化に近いシグナル」と定義します。
これにより、なぜ今アプローチすべきか、なぜ優先順位が高いのかを、感覚ではなくエビデンスで共有できるようになります。
ABMは一度設計して終わりではありません。
月に一度でもよいので、営業とマーケが集まり、実際に商談化した企業や、想定と違った企業、ニーズがなかった企業などを振り返ります。
「この企業は条件に合っていたが、実際は予算がなかった」「この業種は今、凍結傾向にある」…こうしたリアルなフィードバックを即座に反映させる。この高速PDCAこそが、組織連携の本質です。

ここからは、展示会・イベントマーケティング大手の株式会社博展が、営業DXツールを活用して営業・マーケティング活動を効率化した事例をご紹介します。展示会大手の博展は、手作業だった企業情報の整理をツールで自動化。データの可視化により、感覚に頼らない戦略立案と営業活動の効率化を実現しました。
博展は、自社サービスである展示会用パッケージブース「パケテン」を提供していますが、営業活動の中で次のような課題を抱えていました。
このように、ターゲット企業の情報整理・優先度付けという基盤部分の強化が求められていたのです。
博展は、営業DXサービス「SalesRadar」を導入しました。導入の決め手として同社は、操作性の高さと直感的に使えるインターフェースを評価しています。複雑な設定不要でチームがすぐに業務に取り入れられる点が、現場の負担を下げる決定打になりました。
従来は展示会主催者サイトからダウンロードした出展企業の情報を、営業担当が毎回手作業で補完していました。その作業をツールで自動化することで、URLや連絡先などの欠損を補強し、データとしての精度を向上させました。これにより、毎月数時間分の作業時間を節約し、営業が本来の商談活動に集中できるようになりました。また、これまで顧客には「ベンチャー企業が多い」といった感覚的な理解に留まっていたものを、SalesRadarでデータを可視化することで、業種や企業規模の分布を分析し、次の営業設計に活かすことができるようになりました。
関連記事:「肌感覚」から「データに基づく戦略立案」へ。営業DX初心者でも安心なSalesRadar活用術
ここからは、ABM運用に関するよくあるご質問に回答していきます。
A. 自社にとっての理想の顧客像(ICP)の定義です。データ分析だけでなく、営業現場で受注しやすく、かつ利益率が高い顧客の特徴をヒアリングし、マーケと営業で合意形成を行うことから始まります。
A. リードナーチャリングは「個人」を対象に興味関心を高める手法ですが、ABMは企業全体を対象にします。ABMでは、一人の担当者だけでなく、その企業の決裁権者や他部門の関与者も含めた全方位的なアプローチを設計します。
A. いいえ、即効性は期待しにくいです。大規模な企業をターゲットにする場合、商談サイクルが長くなるため、成果が出るまで半年〜1年以上かかることもあります。そのため、短期的な売上だけでなく「ターゲット企業内の接点数」や「商談化率」などの中間指標(KPI)を設定することが重要です。
A. 少数のターゲット企業であれば手動でも可能ですが、企業数が増えると「データの統合」や「名寄せ」が限界を迎えます。組織的に継続して行うには、企業単位で情報を整理できるCRMのような実行基盤がある方が、成功確率は格段に高まるでしょう。
A. マーケの押し付け感をなくし、営業を「リスト作成の要」に巻き込むことが不可欠です。まずは特定のチームで小さな成功事例を作り、社内に横展開しましょう。
ここまで見てきた通り、ABMの成否を分けるのは「戦略」そのものよりも、企業単位でデータを統合し、営業とマーケが共通認識を持てる状態をつくれるかどうかです。
そこで重要になるのが、ABMを“思想”で終わらせず、“実行”まで落とし込む基盤です。
その役割を担うのが、営業DX支援サービス『SalesRadar』です。
SalesRadarは、企業単位でのデータ統合、ターゲット抽出、活動履歴の可視化を一気通貫で行い、営業とマーケティングが「同じ地図」を見て動くための基盤を提供します。
ABMの前提は「企業起点」です。SalesRadarでは、企業情報の補完、業種・規模などの属性データ整理、重複データの名寄せといった基盤整備を支援します。“リードの集合体”ではなく、“企業単位の関係性”として顧客を捉えることが可能になります。
ABMでは、「どの企業を攻めるか」が最重要テーマです。SalesRadarは、条件に基づくターゲット抽出や既存顧客の傾向分析、見込み企業のリスト化を効率化します。
感覚ではなく、データを根拠に“攻めるべき企業”を明確化できる点が大きな強みです。
ABMが失敗する最大の理由は、部門間の分断でした。SalesRadarを共通基盤として活用することで、同じ企業リストを見ながら議論でき、データを根拠に優先順位の共有や、活動履歴を企業単位で振り返れるという環境が整います。これは単なるツール導入ではありません。営業とマーケが同じ地図を持つことそれ自体が、ABM成功の土台になります。
ABMは戦略思想です。しかし、思想だけでは成果は生まれません。企業データの整備や、ターゲットの抽出、現場との連携、PDCAの高速化…これらを日々回すための実行基盤が必要です。SalesRadarは、ABMを「スローガン」で終わらせず、現場で動く仕組みへと変換するためのプラットフォームです。

ABMの成功とは、SFAの数字がきれいに並ぶことや、ダッシュボードが整備されることではありません。本当の成功は、営業が「攻めるべき相手が明確になった」と感じ、マーケが「自分たちの施策が商談を後押ししている」と実感できる状態をつくることです。
ABMは単なるマーケティング手法ではありません。それは、部門の壁を越え、企業が一枚岩で顧客に向き合うための“組織文化改革”そのもの。ABMを導入するということは、ツールを変えることではなく、組織の在り方を変えることなのです。
出典(※1)The B2B Buying Journey: Key Stages and How to Optimize Them
https://www.gartner.com/en/sales/insights/b2b-buying-journey
この記事を書いた人
SalesRadar編集部は、株式会社FUTUREWOODSが運営する企業データベースサービス「SalesRadar」の公式メディアチームです。3,500社以上のマーケティング支援実績をもとに、ABM・リード獲得・営業効率化に関する最新情報と実践ノウハウを発信しています。